令和元年第4回定例会(9月)で行った質問の議事録です。
「気候非常事態宣言」について
議長の許可をいただき,一般質問を行います。
1項目め,気候非常事態宣言についてです。
気候非常事態宣言について,御存じの方がどれぐらいおられるでしょうか。2016年にオーストラリアの自治体が宣言を行ったのが最初で,世界的には現在18カ国,約970の自治体で宣言が行われているようです。日本はまだゼロです。気候変動に関する議論やキャンペーンが余り盛り上がらない日本では知っている人が少ないかもしれませんが,8月29日の毎日新聞朝刊で大きく取り上げられたこともあり,少しずつ話題になってきているように感じています。その内容としては,言葉どおり,気候が非常事態であるということです。近年,気象災害が世界中でたびたび起きています。気候変動が緊急に対応すべき危機であり,気候変動を引き起こしている温室効果ガスの排出を減らす,ひいてはなくす,ゼロにする,その決意をあらわすものです。
気候変動,いわゆる地球温暖化に対して大きく2つの対策が必要です。1つ目は,これまでの想定を超える量の雨や危険な暑さ,感染症の広がりやすさなどからどうやって私たちの生活や都市機能を守るか,被害を最小限に抑えるための適応策です。そして2つ目は,地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を減らして,地球温暖化が進むのをできるだけ緩やかにするための緩和策です。本市としては,1つ目の適応策については,豪雨の甚大な被害を受けたこともあり,意識や対策が進みつつあると感じています。しかし,緩和策についてはどうでしょうか。
今回の一般質問に当たり,インターネットでのアンケートを行いました。モニター画面をごらんください。回答者が31人と少なかったのですが,それなりの傾向があらわれたので紹介します。ネットアンケートで市外の方13%の回答も含みますが,アンケート内容への影響はありません。回答者の年代は,グラフの緑の部分の40代が9人で一番多くなっています。
近年の豪雨災害や巨大台風と気候変動,地球温暖化に因果関係があると思うかどうかについて,「全く思わない」を1,「強く思う」を5として5段階で答えてもらったところ,「強く思う」という5段階目を選んだ人が58%,因果関係を否定する人はゼロでした。
気候変動の原因である二酸化炭素の削減に個人,家庭で取り組んでいるかどうかについても,「全く取り組んでいない」を1,「強く取り組んでいる」を5として5段階で尋ねたところ,全く取り組んでいない人が6%,強く取り組んでいる人が10%,強く取り組むとまではいかないけれども頑張っている人が一番多く,4段階目が39%,3段階目が32%でした。
さて,この議場におられる皆さんはいかがでしょうか。このアンケート結果によってあらわれた傾向は,クロス集計によって豪雨や大型台風と気候変動に因果関係があると強く思っている人ほどその原因となる二酸化炭素削減に強く取り組んでいるということです。だからこそ気象災害を経験した私たちは,その根本原因に目を向け,これからの私たちの子どもや孫が受けることになるかもしれない気象災害をできるだけ緩和するために気候非常事態宣言を行い,二酸化炭素削減の決意をあらわし,広く行動を呼びかけていくことが必要と思い,今回提案させていただくものです。
まず,本市の二酸化炭素の排出を減らす取り組みについて伺いたいと思います。
本市の第2次環境基本計画,地球温暖化対策実行計画では,公共施設から出る二酸化炭素を平成28年の6,730トンから平成30年に6,394トンに減らすこととされていますが,実際のところはどのような現状でしょうか。
また,市内の事業者さんや市民の皆さんの二酸化炭素排出量を減らすために市として行っている啓発や補助制度はどのような効果があらわれているでしょうか。それぞれ何年が基準年で,それに対して何%削減が目標なのか,目標に対する実績がどうかということも含めて御説明いただきたいと思います。
2016年に初めて行われた気候非常事態宣言ですが,ことしになって大きな広がりを見せています。それを後押ししているのが子どもたちです。小・中高校生による授業ストライキが世界中に広がっています。発端はスウェーデンの少女ですが,子どもたちの間で世界中に共感が広がり,これまでに172カ国でイベントが行われました。9月23日の国連気候行動サミットをターゲットに,現在呼びかけられているウイーク・フォー・フューチャー(未来のための1週間)には117カ国2,717イベントのエントリーがあります。彼らの主張は,大人たちは未来のために勉強しなさいと言う。でも,今のまま気候変動が進めば,まともな未来なんてないかもしれない。どうして勉強していられると,彼らは気候破壊,ハッシュタグ,「家が火事だ」という言葉を使っていますが,気候変動を緩和するための政策を大人たちに求めています。
環境問題に取り組むことは,エコ,ライフスタイルの一つ,やりたい人がやることのように言われてきましたが,気候変動はもはやエコではなく,社会の安定や人権を脅かす驚異です。気象災害を経験した本市として,この宣言を行い,二酸化炭素排出量の削減に向けてしっかり取り組むべきではないでしょうか。この宣言を行うことについて市長のお考えをお伺いします。
<平岡雅男生活環境部長>
御質問1点目,本市の二酸化炭素排出量を削減する取り組みについてお答えいたします。
まず,本市公共施設での二酸化炭素排出量削減の取り組みは,平成30年度の排出量は5,799トンCO2で,第2次環境基本計画に掲げる目標値である6,394トンCO2に対し595トンCO2削減できており,杉の木が1年間に吸収する二酸化炭素量換算で4万2,245本分に相当をいたします。また,平成29年度の排出量の6,500トンCO2に対しても,平成30年度は701トンCO2削減をしており,杉の木4万9,771本分の二酸化炭素削減量に相当いたします。引き続き三原市役所地球温暖化対策実行計画に基づき,温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みを推進してまいります。
次に,事業者や市民に削減を促す取り組みについては,昨年度第2次環境基本計画の策定に当たり,事業者に向けてはアンケートを行い,無料省エネ診断の認知度を問いますと,77%は「知らない」との回答があり,「実施してみたいか」の問いについては,48%が「検討をしてみたい」という回答がありましたので,本年度,事業者への働きかけを行っております。市民の方に向けましては,平成27年度から開始をしました家庭用燃料電池システム・エネファームの補助事業により,現在まで65件の申請を受け,設置をされており,一定の効果はあったものと認識しております。また,環境基本計画の実践組織であるみはらし環境会議,各地域会議による事業の中で,地球温暖化防止についての啓発や周知,広島商船高等専門学校と共同研究事業において,小学生を対象とした二酸化炭素削減について考えるエネルギー環境学習を行っております。
本市といたしましても,昨年度,日本の省エネ,低炭素型の製品,サービス,行動など,温暖化対策に資するあらゆる賢い選択を促す国民運動「COOL CHOICE」に賛同し,市民,市民団体,事業者,学校とともに地球温暖化対策の推進に取り組むことを宣言いたしました。これまでホームページで地球温暖化対策やごみの減量化などの行動についての呼びかけや市内で自由に使用できる涼しい場所を紹介するクールシェアの情報,また市民や小・中学生に地球温暖化対策の取り組みについての募集を行いました。今後,その内容を市のホームページなどで発信をしていきたいと考えております。
御質問2点目の気象非常事態宣言を行うべきではないかについてお答えをいたします。
昨年発生いたしました平成30年7月豪雨災害,このたびの九州北部を襲った記録的な豪雨災害など,気象災害は全国どこで起こるのかわからない状態となっております。豪雨災害を経験した本市として気候非常事態宣言を行ってはどうかということですが,宣言を行うに当たりましては,具体的に何をどのように計画し,対策として何を実施していくのかなどの検討を行う必要があります。今後,情報収集を行ってまいります。
本市の公共施設の二酸化炭素排出量が市としての目標よりも大きく削減できたことをお答えいただきました。どういうところで減らしてこれたのか,まだ削減ができそうなところがあるのかなど,分析をされてますでしょうか,再質問として伺いたいと思います。
本市の温暖化対策の現状や二酸化炭素排出量を余り公開されていないので,十分な把握ができていませんが,政府が示している基準年である2013年に,私のわかる範囲で一番近い2010年の三原市の数値と御答弁いただいた平成30年ですから2018年の数値を比較すると,約18.6%の削減を達成していることになるかと思います。立派な数値だと思います。
2015年のパリ協定を踏まえた日本政府としての地球温暖化対策計画では,2013年度との比較で,2030年に26%,2050年までに80%の削減をすることになっています。そんなの無理ですという声が聞こえてきそうですが,地球環境のほうからこれ以上二酸化炭素を吸収するのはもう無理ですと気象災害などの形でしわ寄せがあらわれている現状です。パリ協定では気温上昇を2度以内に抑えることを目標として合意しましたが,先ほど申し上げた日本の目標は3.5度上昇に相当,かなり不十分な目標であるという世界的な評価を受けています。昨年10月には1.5度特別報告書が出され,現在1度の気温上昇でこれだけの気象の変化が起きていることから,日本国内でも先行自治体では1.5度目標の政策が発表されています。本市としてまだまだ減らさなくてはいけないのは明らかです。
公共施設の中でも数値目標には含まない対象外の施設もありますが,対象外施設について排出量の把握はされていますでしょうか。
また,街灯のLED化も進められていますが,公共施設以外で市として二酸化炭素排出量を把握されているものがほかにもあればお示しください。
今回の一般質問の目的は,排出量削減の具体策を議論することではなく,まず三原市の現状を共通認識として持つこと,そして二酸化炭素排出量を減らす必要性を共有したいと思っています。何が把握できて,何が把握できないのか,わかっていることを出発点にして,また別の機会で具体策を提案したいと思っております。率直なお答えを期待しておりますのでよろしくお願いいたします。
<平岡雅男生活環境部長>
御質問の1点目についてですけども,平成22年度以降の二酸化炭素排出量が削減できた取り組みといたしましては,電気や重油,灯油の使用量の削減から,また昼間の電気の消灯やプリンターなど電気機器の主電源を閉庁時に消すなどの省エネに対する取り組み,またクールビズやウオームビズなどの工夫をしながら,冷暖房の使用についての日々の積み重ねが削減につながっていると考えます。また,公共施設の削減も要因の一つになっていると思われ,今後もこの公共施設の削減が効果があると考えております。また,三原市役所地球温暖化対策実行計画の策定に関しても,この新庁舎での使用量を基準として,今の時代に即した省エネの取り組みが推進していけるような検討を行ってまいります。
御質問2点目の公共施設の数値目標対象外の施設についての二酸化炭素排出量ですけれども,この数値については把握ができておりません。
御質問3点目,公共施設以外の二酸化炭素排出量について把握をしているものは,平成30年度,防犯灯を蛍光灯からLEDにかえたことにより,年間183トンの二酸化炭素を削減することができております。これまでも市民に向けた啓発や一事業者としての三原市役所など公共施設での二酸化炭素の削減に向けた取り組みを行ってまいりましたが,今後も削減への行動を三原市全体に広げてまいります。
地道な省エネの努力をこつこつ積み重ねてこられたことなどを御答弁いただきました。新庁舎になりましたので,エネルギー消費量がどうなるのか,私も楽しみにしております。これから排出量削減の具体策もまだまだ考えていかなくてはいけないと思っておりますが,財政の厳しさを常々申し上げている私ですので,市としての投資が少なくて,有効な策を私も頑張って提案していきたいと思っております。
それから,最後にもう一度,宣言を早急に行うべきことについて市長に伺いたいと思います。
実は9月5日,昨日開会した長崎県壱岐市議会で気候非常事態宣言が議案として上程されました。壱岐市では上程された議案をホームページで公開されてますので,宣言の一部分を紹介させていただきます。まだ可決はされておりません。
産業革命の前に比べて約1度の気温上昇によって,世界各地で熱波,山火事,洪水,海面上昇,干ばつなどの極端な気候変動が頻繁に引き起こされ,多くの人々や自然が犠牲となっており,地球上で安心して安全な生活を送ることが困難な状況になりつつあります。日本各地でも,猛暑,台風,集中豪雨,洪水などの気象災害により痛ましい被害が発生し,壱岐市においても集中豪雨による災害や水不足などの異常事態が発生しています。また,藻場が減少し,基幹産業である漁業も深刻な影響を受けています。壱岐市は,地球温暖化に起因する気候変動が人間社会や自然界にとって著しい脅威となっていることを認識し,ここに気候非常事態を宣言しますということと,脱炭素化の取り組みが新たな成長と発展につながることが書かれております。そして,この宣言の最後に,日本政府やほかの地方自治体に気候非常事態宣言についての連携を広く呼びかけますと締めくくられています。
どうでしょうか,この呼びかけに,市長,共感していただけませんでしょうか。これから,この呼びかけに賛同して宣言を行う自治体がふえていくものと思います。豪雨の被害を受けた本市として早急に宣言を行い,ほかの自治体へも三原市から宣言の呼びかけを行っていくべきではないでしょうか。天満市長のお考えをお伺いします。
<平岡雅男生活環境部長>
気候非常事態宣言につきましては,今後情報収集を行ってまいります。本市では,先ほども申しましたように,温暖化対策に資するあらゆる賢い選択を促す国民運動「COOL CHOICE」に賛同して,地球温暖化対策の推進に取り組むことを宣言いたしました。二酸化炭素削減に向けては,市民一人一人が日常生活の中で行う省エネやごみの排出抑制など持続可能な世界の実現に向けて,地道ではありますけれども小さなことからこつこつと行動をすることがやがて大きな力になるというふうに思っております。この地球温暖化対策の輪を広げる取り組みを三原市としても進めてまいります。
COOL CHOICE宣言は,個人でもできますので,私も宣言をしております。COOL CHOICE宣言とこの気候非常事態宣言,重みが全く違うと思います。常々言われているシティプロモーションですけれども,シティプロモーション,いろんなやり方があると思います。こういう気候非常事態宣言,壱岐市がまだ可決されておりませんが,壱岐市が1番にされたとしたら,日本で1番にやった壱岐市ということで名前が広がっていきます。1番になれる可能性が少ないのでとても残念ですが,できることなら10番以内,順位が重要なわけではございません。本当にこの取り組みを進めていくことこそが重要ではありますが,こういった気候の問題に真剣に取り組む三原市なんだということをアピールできるような取り組みを考えていただきたいと思います。
昨年の12月議会でSDGs,持続可能な開発目標について質問をさせていただきました。SDGsのロゴ,17の目標のアイコンが並んだものがロゴになっています。一番上の段が健康,福祉,教育,2番目の段が経済,産業,まちづくり,人権,一番下が地球環境,平和,パートナーシップ,協力し合うことです。この順番には意味があって,地球環境が豊かで平和で助け合ってこそ経済が豊かになり,産業が発展し,持続可能なまちづくりが可能になる。経済が豊かになってこそ福祉が充実できる,質の高い教育ができる,そういうことでこのSDGsのロゴの順番が決まっております。ここまでの一般質問でも議員さん方が三原の福祉をもっと充実するべきではないか,いろんな対策が必要であることをおっしゃってて,それも緊急の課題であることを認識しておりますが,やはり私たちが生きる場所が災害を受ける,暑過ぎるというようなことでは成り立っていきません。ぜひこの気候非常事態宣言を行って,三原市としても本気でCO2削減に取り組んでいただきたいと思います。