平成26年 第4回定例会一般質問 自然エネルギーの推進について(農林水産業・中山間地域活性化の目的で、自然エネルギーに取り組むべきではないか)

H26年9月議会

平成26年第4回定例会(9月)本会議で行った質問の議事録です。

自然エネルギーの推進について(農林水産業・中山間地域活性化の目的で、自然エネルギーに取り組むべきではないか)

 議長のお許しをいただきましたので、通告しております2項目について質問させていただきます。3番の住田議員から4番の私へとバトンタッチをしていただきました。

 まず、自然エネルギーの推進について、農林水産業、中山間地域活性化の目的で自然エネルギーに取り組むべきではないかについてです。

 最初に、言葉の定義についてお断りをさせていただくのですが、質問1点目の法律の名称として再生可能エネルギーという言葉が使われておりますが、再生可能エネルギーという言葉がちょっと長いことと、一般的に自然エネルギーという言葉のほうがなじみがあるかと思いまして、全体を通して自然エネルギーという表現を主に使いたいと思いますが、再生可能エネルギーと自然エネルギーと同じ意味で使っておりますということを、まずお断りをさせてください。
それでは、自然エネルギーの推進に関する質問の1点目です。

 ことしの5月に農山漁村再生可能エネルギー法、正式名称で農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律という長い名称ですけれども、農山漁村再生可能エネルギー法が施行されました。農山漁村の活性化を図るとともに、エネルギー供給源の多様化を目的とした法律です。具体的には市町村、農林漁業者やその団体と地域住民、学識経験者、設備整備者で協議会をつくり、基本計画を作成するというものです。

 設備整備者、発電事業者にとってのメリットは、これまで個別に許可や届け出を行ってきた農地法、酪肉振興法、森林法などの手続を市町村による認定という形でワンストップで行えること、一方、市町村や地域の農林漁業者にとってのメリットは、発電収益の地域への還元のほか、計画のもとで関係者の理解を得ながら調整を進めることで、知らない人が知らないうちにやってきて、発電事業を始めていたというのでなく、地域のエネルギーのあり方を通じて、地域の発展や農林漁業の活性化を考えていくことが期待されます。

 また、農山漁村再エネ法で大きく変わったのは、第1種農地も活用が可能になったことです。これは、農地法の緩和ということではなく、あくまでも農業が優先されるべきであり、農業の振興に資するという目的でありますが、農業上の再生利用が困難な荒廃農地など、第1種農地でも発電設備を設置することが可能になりました。

 本市では、公共施設の屋根貸しによる太陽光発電事業者の募集を始めたところですが、農林水産業、中山間地域活性化を目的とした太陽光発電、またもっと幅広く家畜の排せつ物によるバイオマス発電、マイクロ水力発電なども含めて、地域の未利用の資源の活用を考え、基本計画の策定に取り組むべきではないでしょうか、お考えをお伺いします。

 次に、森林バイオマスの熱利用についてです。
森林の公益的機能、多面的機能が評価され、健全でない森林は、土砂災害の危険が高まることもあり、その保全が必要とされながら、余り進展が見られない状況にあります。また、本市において中山間地域活性化基本方針が定められ、地域での計画づくりが進められているところですが、各地域の計画には林地の保全、林業の振興、竹の活用、木材の燃料としての活用、間伐材の燃料化などが盛り込まれております。これらについて個人単位で始められることもありますが、地域計画に盛り込まれているのは、これらを地域産業として取り組めないかという項目として上げられています。そのためには、需要と供給の調査がまず必要であり、また地域内のみで完結するのは難しいことから、三原市全体として需要、供給の調査及びそのマッチングの可能性を検討することが必要であり、市としてその調査に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 それから、3点目、エネルギー関連の専門部署を設けることについてです。
エネルギーは、これまで国の政策であり、あまり地方自治体の課題にはなってきませんでした。しかし、特に東京電力の福島第一原発の事故の後、自然エネルギーの需要が急速に高まっています。自然エネルギーは、小規模分散型で地域に根差したものが基本であり、また広域災害が起きた場合に、大規模集中電源の供給がとまっても地域での対応が可能であり、これまでの環境対策としての活用だけでなく、災害発生時、非常時のエネルギーの確保という点からも地方自治体の新しい課題となっています。

 また、森林バイオマスについては、活用と同時に保全をすることによって、災害対策にもつながります。単にエネルギー供給の問題にとどまらず、農林水産業、中山間地域の活性化、環境、災害対策、新産業創出など、多くの分野にわたる課題となっておりますが、専門部署を設けて戦略的に取り組む必要があるのではないでしょうか。お考えをお伺いします。

<山口秀充経済部長>

 自然エネルギーの推進について、3点の御質問をいただきました。

 最初に、御質問1点目、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の策定についてお答えいたします。
 この法律は、太陽光、風力、バイオマスなどの、いわゆる再生可能エネルギーを積極的に活用した発電施設を農山漁村に導入することにより、地域の農林水産業等との調和を図り、地域の発展を促進することを目的とし、市町村において基本計画を策定することができるものとされています。この計画を策定した場合、発電施設が整備される地域においては、売電事業者から収入の一部が地域に還元されることで、農山漁村の活性化が見込めるなどのメリットがあります。
 しかしながら、本来、太陽光やバイオマス等の発電施設の設置や運営は、事業関係者が主体となるため、事業者が未定のまま基本計画を作成した場合は、地域への利益還元、土地等の利用調整及び事業関係者等の合意形成や機運醸成に向けた取り組みが必要となるなど、事業実施に向けた課題が想定されます。このため、基本計画の作成、実施に当たっては、行政、発電事業者、地権者、農林漁業者等による協議会を設立し、十分な議論のもと合意形成を図る必要があると考えておりますので、事業の推進については、先進地や国及び県の情報を得ながら、調査、研究を進めてまいります。

 次に、御質問2点目、森林バイオマスの熱利用についてお答えいたします。
 森林バイオマスは、森林の管理の際に生ずる間伐材をチップやペレットに加工し、熱源として温水プールなどのボイラーや家屋の暖房に利用するもので、環境に優しい、森林資源を有効活用できる、コストは重油以下であるなどのメリットがあり、林業、木材加工業、運搬業、施設運営など、多くの業種や分野にかかわり、地域産業の活性化につながると考えられています。
 森林バイオマスに利用する間伐材は、森林所有者が杉やヒノキなどの人工林の管理の際に生じる樹齢30年以上のものが主に利用され、森林面積1ヘクタール当たり平均して約35立方メートルの間伐材が発生するとされております。こうした間伐材を広大な森林内から伐採、収集、搬出し、木材チップ等に加工し、販売、経営を行うための事業収益を上げるためには間伐材が1万立方メートル、面積換算で年間285ヘクタール分が必要であると言われています。
現在、三原市における人工林の総面積は約3,200ヘクタールですが、間伐を行った森林面積の実績は、今年度においては間伐の予定はなく、過去3年間の実績を見ても平成25年度が約1ヘクタールで間伐材35立方メートル、平成24年度、平成23年度においては実績がありません。本市では、間伐面積が小さいことから搬出コストが高く採算が合わないため、間伐材のほとんどは切り倒されたまま堆肥として利用されています。本市のこうした状況を考えると、早期に森林バイオマスの熱利用を推進することは難しい状況にあると考えますが、既に森林バイオマスに取り組んでいる庄原市及び島根県雲南市などの取り組み事例の情報を収集し、研究してまいります。

 最後に、御質問3点目、自然エネルギーについて庁内横断的な専門部署を設けて、戦略的に取り組む必要があるのではないかについてお答えいたします。
エネルギー政策につきましては、国民生活や経済活動に支障なく、安全かつ安定的なエネルギー供給がなされることが重要であり、再生可能エネルギーの確保策と代替可能性、経済活動への影響などの観点から、国の責任において対応が必要であると考えております。今後、本市が再生可能エネルギーの導入拡大に取り組むに当たっては、再生可能エネルギーの導入を最大限加速化するという国の動向を注視しつつ、県と連携しながら必要に応じて組織的な対応を検討してまいります。

 それぞれお答えいただきました。
 1点目の農山漁村再エネ法です。
具体的な事業が想定された上で、計画が策定されるという流れのほうが望ましいという御見解だと受けとめておりますが、法律の趣旨からすると、まず自治体や地域が主体的に自然エネルギーの活用を考えていくということで、業者が未定のまま計画策定準備をしている自治体もあるように、農水省のほうから聞いております。しかしながら、おっしゃるように5月に施行されたばかりの法律でもあり、農水省の広島県での説明会も8月の予定がずれ込んで、今週開かれたように聞いております。今後の情報収集、御検討をお願いしたいと思います。

 3点目の専門部署の設置についてです。
エネルギーについて国の政策によるところが大きいということは、おっしゃるとおりだと思います。今回の一般質問で政府の地方創生の政策をどう活用していくかという視点の質問が、ほかの議員さん方からもされております。政府から地域経済イノベーションサイクルの基本モデルとして、資金の流出を防いで、地域内でのキャッシュフローを高める代替サービスというのが重要な位置づけになっていると理解しております。これは、今現在の需要と消費が確実にあるものを地域内での調達を可能にすることで、地域外へ出ていたお金を地域内で回していこうということです。例えば家畜の飼料を輸入していたとしたら、その購入費用は地域外へ出ていくわけですが、それを地域内で調達できれば、お金も地域内で回っていくという考え方です。エネルギーにつきましては、需要と消費が確実であり、地域経済の再生に向けた取り組みとして、政府としては貿易赤字対策も兼ねて国内の電気代相当20兆円のうち、6兆円を地域循環で賄っていくという制度設計をされているようです。

 こういった制度を利用しようと思えば、三原市としてエネルギーについて考え方を整理して、きちんと持っておかれる必要があるものと考えております。自然エネルギー導入によってコストがふえることへの理解が得られるかどうかということもありますが、先ほど申し上げたような、輸入飼料のほうがその場で支払う費用は安くて済むけれども、地域で調達することで経済循環が生まれるということをどう評価して、調整し、地域内のキャッシュフローを高めていけるか、とても難しい課題だと思いますけれども、そういった評価、調整の役割もエネルギーの地産地消を進めていく上で、地方自治体として必要な役割になってきているのではないかと感じております。

 自然エネルギーのことで質問した流れで、エネルギーの専門担当部署が必要と申し上げておりますけれども、思いとしてはエネルギーの問題に限らず、正田議員がきのう言われたように、三原市役所の組織体制が、失礼ながら今日的な課題に対応し切れていないのではないか、戦力的に取り組む部署なりプロジェクトチームが必要ではないかと私も感じておりまして、その点につきましては、正田議員への御答弁の中で検討していくという御回答だったと思いますので、その点を私からも強く要望したいと思います。

 飛ばしておりました、2点目の質問については、再質問をさせていただきます。バイオマスの熱利用です。
バイオマスについては、その効果を認めていただいていると受けとめました。そして、試算もしていただいて、ありがとうございます。自然エネルギーの特徴は、大きく4つあります。その一つが使ってもなくならないということですけれども、森林バイオマスの場合は、再生はするけれども使い過ぎるとなくなりますので、導入前に十分な検証が大切であると考えております。

 三原市の人工林の現状では、事業として成り立たせるのは難しいとのことです。確かにバイオマスの先進地として取り組んでいる自治体は、既に林業の基盤があるところが多く、現在の三原市の状況では、大規模に行うことは難しいかもしれません。ですが、森林バイオマスについては、規模を小さくして活用することも可能です。

 例えば一例ですけれども、ある温浴施設でまきボイラーを導入したところ、灯油ボイラーの場合で1日に435リットルの灯油、年間1,000万円以上の燃料費がかかるところが、まきボイラーを導入することで1キログラム12円でまきを買い取り、年間300万円弱の燃料費で済んでいる。つまり、年間700万円程度の経費が節約できているということです。この施設の場合で年間のまきの使用料が24万キログラムということで、軽トラで運ぶとして500台というか、500回運搬するということになるかと思いますが、1台当たりのまきの買い取り価格が六、七千円になりますので、新産業と呼ぶには心もとない感じではありますが、現在、こういった間伐材で補助収入を得る土佐の森方式と呼ばれるやり方が、「C材で晩酌を!」というかけ声で全国に広まりつつあります。「C材で晩酌を!」というのは、建築用材として販売ができるのがA材と呼ばれるものですが、A材のような値段にはならないけれども、B材、C材でちょっと晩酌するくらいの収入にはなるよということで広がっております。

 森林バイオマスを導入するに当たって、チップ化、ペレット化する場合は、加工施設の建設が必要になりますが、現在、まきのまま燃料にできるまきボイラーの開発や導入が進んでおりまして、まきの場合ですと広い保管のスペースが必要にはなりますが、原木の丸太のままで利用が可能となります。まきボイラーと重油ボイラーを併用することも可能です。

 細かい話になりますが、燃料単価、熱量1,000キロカロリー当たりでの比較をしますと、灯油が10.4円、重油8.9円、ペレットが10円、チップ7.5円、まきが1キログラム14円として5.8円、1,000キロカロリーの熱量で換算したものです。こういったまきボイラーの導入が可能な施設が三原市内にあるかどうか、どれくらいのまき燃料で賄えるのか、またその供給が可能か調査をしていただけないでしょうか。

 また、個人の住宅でまきストーブを設置される方もふえています。まき割りなど大変な手間もあるわけですが、火のある暮らしを楽しんでおられるようで、煙突のあるおうちが少しずつふえているのが目にとまっております。まきの調達にはそれぞれ苦労されながら確保しておられるようで、こういった個人でまきになる木材を探しておられる人に対して、自分で取りに来るのであれば提供できるよというような情報提供が市のほうからできないでしょうか、お尋ねします。
いきなり産業というレベルに持っていくのは確かに難しいと思いますが、今ある資源を生かしていく、それからとにかく山に人が入るということを促していくことが今急がれている状況だと思いますので、よろしくお願いいたします。

<山口秀充経済部長>

 再質問をいただきました、まきボイラーの導入が可能な施設が三原市内にあるかどうかについてお答えいたします。

 市内の多くの熱利用施設で燃料として使用されている灯油や重油は高値が続いており、今後も高値で推移すると予想されます。森林バイオマス先進地において、現在使用の重油だきボイラーからまきボイラーを導入した場合を想定すると、設備費がたとえ高くついても燃料費の低減効果とあわせ、トータルコストを抑えることが可能と思われます。三原市において、まきボイラーの導入可能な施設について調査することについては検討をしますが、三原市では林業の基盤がなく、まきの原料となる間伐材の資源不足で、まきの安定供給ができないことが予測されるため、まきボイラー導入の実現性は低いと考えられます。

 次に、2点目の個人のまきストーブを設置してる方に対して、まきの調達に係る情報提供が市からできないかについてお答えいたします。
間伐作業は、山林所有者から委託を受けた施業者が行っており、森林内に残材が発生していたとしても、それは山林所有者の所有物であり、また情報収集もできないことから、市からの情報提供は難しいと考えています。最近では、山林所有者みずからが山の手入れをすることもなくなり、森林は荒廃しています。松くい虫の発生とマツタケが激減したことも影響し、悪循環を招いています。山林所有者がみずからの山を手入れし、森林資源を収集し、需要者が資源として活用する方法も考えられます。こうしたシステムを構築するためには、市民一人一人が経済効率のみにとらわれず、バイオマス活用の重要性を認識し、積極的に取り組む機運を醸成する必要があり、今後の研究課題とさせていただきたいと思います。

 森林の荒廃については、認識をしておられると受けとめました。本当にマツタケがとれなくなっているということや山が荒れている状況は、本当にたくさんの人が感じていることだと思います。安定供給が難しいのではないかということでした。三原市が森林率66%、これだけある木を何とか活用できないのか、生かせないのかという声、思いは、私もたくさん聞いておりますし、やはり、できないなら、できないというか、こういうやり方なら進めていけるのではないかというところをもう少し、研究していかれるということですので、伝えていただきたいと思っております。中山間地域の皆さんからも、本当にこの山を生かせないかという声が大きく出ているところと思います。

 もう一つは、災害対策としても6月議会で平本議員が創志会でもペレットストーブ、エコストーブ、キッチンストーブなどをつくったりされているというお話もありましたし、徐々にそういった機運をつくっていくということが大切ではないかと思います。

 もう一つ、環境政策係が事務局をしておりますみはらし環境会議の地域実践組織の一つで、くい環境会議がことし2月にしたイベントといいますか、企画でまき暖房と森林保全を考える集いというのをされたところ、思いのほか、予想以上にたくさんの方が来られたというふうに伺っております。こちらへ参加された方で、脳梗塞で倒れられて体が不自由になっておられる方が、まきストーブの火がとてもやわらかくて体にいいというのを実感して、自分も導入したいということも言っておられました。少しずつそういった機運を醸成していけたらと思っております。これは、経済部だけでなく生活環境部、それから総務企画部と、ぜひ連携をして進めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。