平成31年 第1回定例会一般質問 森林経営管理法の施行に伴い新たに始まる森林経営管理事業及び林業振興事業全般について

平成31年第1回定例会(3月)で行った質問の議事録です。

森林経営管理法の施行に伴い新たに始まる森林経営管理事業及び林業振興事業全般について

 議長の許可をいただき,通告しております2項目の質問を行います。今回は,転換ということをテーマに2項目を質問させていただきたいと思います。
 まず,1点目は,森林経営管理法の施行に伴い新たに始まる森林経営管理事業及び林業振興事業全般についてです。
 森林経営管理法が,昨年5月に成立し,ことし4月から施行となることに伴い,上程されております平成31年度予算に920万8,000円の森林経営管理事業が盛り込まれています。財源は,森林環境譲与税です。森林経営管理法は,森林所有者に森林の経営管理を適切に行う責務を求めるもので,林業政策の大きな転換です。林野庁の資料によると,8割の市町村が管内の民有人工林が手入れ不足と回答しています。手入れが十分に行われないと,災害防止や地球温暖化防止など森林の公益的機能が十分に発揮されません。しかし,森林の所有者がわからなかったり,境界がわからなかったりなどといった問題もあり,なかなか打ち手が進まない状況にありました。それを打開していこうという政策になるわけですが,森林所有者の責務のみならず,市町村にも過大な責務が伴う森林経営管理法で,やらないと判断される自治体もあるようです。昨日の高木議員の森林環境譲与税の質問への答弁で,事業の概要にも触れておられましたが,本市としてどのようなスケジュールでどのように取り組んでいかれるのか,お尋ねします。
 2点目に,森林生態系の多面的機能保全,防災,地域経済の視点から自伐林家を育成支援することについて伺います。
 自伐林家というのは,なかなか耳なれない言葉かと思いますので,文字をパネルに表示しておりますが,みずから伐採をする森林所有者さんということです。森林経営管理法の目的として,先ほど申し上げたような森林の公益的機能が発揮されることが上げられていますが,その一方で,林業の成長産業化もうたわれています。成長産業にということは,地域経済に必要なことだと思いますが,その中身を見ると,短期短伐期皆伐という短いサイクルで伐採をする施業,文字をまた表示をさせていただいておりますが,短いサイクルで木を全て切ってしまう,皆伐というスタイルの施業が想定されているのではないかということが心配です。この施業方法では,山肌土壌がさらされることにより,森林生態系の多面的機能が大幅に低下しています。理想としては,長伐期多間伐,長いサイクルで木を切ること,それも皆伐するのではなく,間伐を繰り返していくという長伐期多間伐という施業方法が理想だと思っております。これは2割の材を山から切り出すわけですが,切り出したとしても,残った木が2割増し,3割増しに育つことで,山の価値を保っていくというそういうサイクルで施業を行うことです。この長伐期多間伐というスタイルが望ましく,それができる自伐林家さんがふえていくことが必要です。これは,林家さんにやる気になっていただくことが前提ですので,難しいことは承知しています。ですが,まだまだ少数派の取り組みではありますが,自伐型林業に取り組む自治体や地域が確実にふえています。大規模な林道整備や大型重機などの投資コストが抑えられることもありますが,地形に無理のかからない作業道,環境保全型の施業により,土砂災害防止に貢献できることも大きなメリットです。本市でもこの自伐の施業について講習会を開かれるなど取り組んでいるところではありますが,さらに拡充していく必要があるのではないでしょうか,お尋ねします。
 3点目,森林保全の意識啓発と担い手育成についてです。
 現在,ひろしまの森づくり県民税を財源とする三原の森づくり事業では,林家さんだけでなく,ボランティア団体や企業が行う森林保全活動にも支援をしています。この事業によって,担い手の広がりができているでしょうか,お伺いします。

<吉川進経済部長>

 
 御質問の1点目,意向調査を初めとする森林経営管理事業のスケジュールについてお答えをいたします。
 森林経営管理事業は,ことし4月から施行される森林経営管理法による制度に基づき,森林所有者がみずから経営管理できない森林を市町村や意欲と能力のある林業経営者によって持続的に管理し,活用する仕組みを構築し,森林整備を促進する事業でございます。本市では,この森林整備を行うため,まず昨年の豪雨による森林災害の復旧支援も視野に入れ,これらを優先的に取り組む箇所として選定し,進めていく予定としております。スケジュールとしましては,森林所有者を対象に,森林の経営管理をどうするかの意向把握を行い,次に経営管理計画の策定へと導いていく予定ですが,他の災害復旧事業と調整を図りながら進めてまいりたいと考えております。
 御質問の2点目,森林生態系の多面的機能保全,防災,地域経済の視点から自伐林家を育成支援することについてお答えをいたします。
 森林経営管理法に基づく森林経営管理制度では,林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を目標とされております。林業の成長産業化とは,自然条件がよく,林業経営に適した森林は,経営管理の高度化,効率化により,林業的利用を積極的に行っていくというものです。また,森林資源の適切な管理とは,自然条件に照らし,林業経営に不向きな森林は,管理コストの低い針葉樹や広葉樹がまじり合った森林へと誘導していくというものであります。このことから,森林経営管理制度は,高度で持続的な林業経営の展開を主な目的としているため,御質問の多面的機能保全,防災,地域経済の視点から自伐林家を育成支援することへは直接的に結びついていかないと考えております。
 御質問の3点目,森林保全の意識啓発と担い手育成についてお答えをいたします。
 森林経営管理制度は,林業経営を視点に制度設計されており,森林保全の意識啓発や担い手育成においても,経営体としての取り組みが必要であると考えております。一方,経営体とは別の新たな森の担い手として位置づけた森林所有者や森林を所有しない者が行う森林保全活動は,森林経営管理制度ではなく,別の支援策で取り組む必要があると考えております。そのため,本市では,ひろしまの森づくり県民税を活用し,毎年度10団体程度において森林保全活動や森林体験活動に対する補助を行ってまいりました。これらの取り組みは,森林保全という観点で重要でありますので,引き続き支援を行ってまいります。
 また,近年では,森林所有者や直接森林を所有していない自治会などを対象に自伐間伐の研修会を行うなど,新たな森の担い手としての育成に取り組んでいるところでございます。この取り組みが市内全域に広がり,森林の保全機能が維持されるよう,今後も継続的に支援し,活動の普及啓発に努めてまいります。

 新たな森の担い手として,森林保全や森林体験の活動の支援もしていただいております。これは,森に親しんでもらう,森に入ってもらう,森の恩恵を受けてもらう人がふえて,担い手の裾野を広げていくために大変重要なことだと思っております。森林保全の重要性のあらわれが,今回の法整備ですので,その重要性を体験をもって理解してくださる方がふえるよう努めていただきたいと思います。御答弁をいただいたように,森林経営管理制度については,自伐林家の育成には結びついていないだろうと思っております。今回,あえて総括質問でこの課題を取り上げた目的は大きく2つあります。1つは,森林経営管理法の問題です。ぼうっとしていると地方の山が搾取される結果になりかねない,そんな懸念を抱いております。制度の目標は,御答弁でおっしゃったように,林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立であるということです。確かに木を切って終わりではなく,植樹,植林という木を育てることも制度に盛り込まれています。しかし,木が育つ長い年月を委託業者がどう保証していくか,課題です。30年先,50年先に向けて三原の山がどうなっていけばよいのか,私たちはしっかり理念を持って取り組んでいかなくてはなりません。森林を健全に保っていく手段として,自伐型林業が有効であると考えます。北九州豪雨,西日本豪雨においても,自伐型林業に取り組んでいる山では土砂崩れが起きなかったという調査結果もあります。
 再質問として,重ねて自伐型林業の担い手育成について伺います。
 現在,森林所有者さんや自治会などを対象にした自伐間伐の研修をされているということです。今すぐは無理でしょうけれども,将来的に森林所有者さんから委託を受けるなどの形で担っていただけることを目指して育成いただきたいと思っておりますが,いかがでしょうか。ほかの自治体では,自伐型林業で起業して,地域の山を管理,整備されている例もあります。ぜひそういった形の担い手,コミュニティビジネスとして成り立つような担い手が育つことを目指していただきたいと思っております。そういう観点で再質問いたします。

<吉川進経済部長>

 
 再質問をいただきました。自伐型林業の担い手育成についてお答えをいたします。
 本市では,平成28年度から森林保全対策の一つとして,森林所有者などがみずから間伐し搬出する自伐間伐を推進しております。また,平成29年度からは,自伐間伐の取り組みを具体化するために,賀茂地方森林組合が運営し,木質チップなどを生産,集積する賀茂バイオマスセンターが近くにある大和地域をモデル地域と位置づけ,山をどのように活用,保全していくかなどの意見交換会や現地での伐採講習会を開催し,自伐間伐に取り組む人材の発掘等に努めてきたところでございます。自伐間伐を推進する上で重要なものに,間伐材の販売ルートの確保と自伐間伐を担う人材の育成があります。まずは,この大和地域で自伐間伐の取り組みが定着するよう,組織の立ち上げも含め支援し,その事例をモデルとして持続可能な自伐間伐型の森林保全活動が市内各地域に広がるよう推進してまいります。
 また,担い手の育成につきましても,里山と親しむための森林保全活動を行っている団体や木と親しむ森林体験活動への支援等により,さらに森林へ関心を持っていただくことにより,自伐型林業の担い手の育成につながるよう,継続して取り組んでまいります。

 現地での伐採講習会などの際に意見交換会も行っていただいているということで,大変心強くうれしく感じております。平成25年にも森林資源の活用をということで一般質問をしましたが,そのときにはなかなか難しくて進まないのかなと思っていましたが,地方創生交付金などの活用もあって,森林活用調査可能性の調査なんかも行われてきたところです。そうはいってもまだまだ森林の個々の状況というのは把握が難しくてという状況だったのが,国のお金もついて,そこが進んでいくということですので,それをぜひ地域にいい形で,先ほどコミュニティビジネスというようなことも言いましたが,そういう担い手が新たに育っていく,雇用につながっていくというような形にしていただきたいと思っております。先ほど今回の総括質問で行う目的の1つ目を言いましたが,もう一つ,2つ目の目的は,これは森林政策だけではなくて,林業政策だけではなくて,移住・定住対策につながっていくことだと思っています。先ほども申し上げたように,地域で仕事をつくり,雇用が生まれていくという例がほかのところで起きております。自伐型林業推進協会とか中山間地域フォーラムとかあるんですが,そういうところは田園回帰という地方への移住者を生み出していくような流れを提唱していたりもするところですので,ぜひこの自伐型林業ということを進めていただきたいと思っております,という要望を申し上げて,次の質問に移ります。